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Charlene Man

シャーリーン・マン
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Charlene Man(シャーリーン・マン)は、ロンドンと香港を拠点に活動するキャンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツ出身のイラストレーター。修了後、シンプルながらも絶妙な構図と色使いが特徴的な作風で幅広い対象を引きつけてきた。活動開始当初は外部プロジェクトの受注を主に行っていたが、最近では活動の重心を自らのプロジェクトに移し、より私的で個性溢れる作品の数々を生み出している。こうしたキャリアの転換は自然に生じたものだが、故郷・香港セン湾区の石造家屋に暮らしていたときは自らが現在のような生活を送るとは予想すらしなかったという。

前向きで遊び心溢れるCharleneの作品に描かれたパステルカラーのキャラクターを一見しただけでは、彼女の作品は表面的なものに見えるかもしれない。しかし彼女の個展『 DOWN TIME(ダウン・タイム)』の開催直後に行われた今回のインタビューでは、Charleneが自らの作品と活動に込める想いを明らかにしてくれた。

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どのような活動をされているのですか。

ハッピーなイメージを作っている、という表現がしっくりきます。大学卒業後はしばらく商業的な仕事を受けていましたが、最近になって日本と香港で巡回個展を開催させていただきました。1今でも自分はイラストレーターだと思っていますが、人を楽しませる作品を作りたいし、誰かが喜んでくれると自分も嬉しくなります。そう説明するのが的確かもしれません。

生い立ちとこれまでに受けてきたアートの教育について

生い立ちについて聞かせてください。

セン湾区という、ローストグースで知られる香港の小さな村で育ちました。ローストグース目当てにわざわざ訪れてくる人もいる場所です。多くの野良犬と野良猫がそこら中に住み着いるような村で、子供の頃は外で走り回ったり、川で魚を捕ったりして遊んでいました。当時は、祖父が山腹に建てた石造家屋に住んでいました。

13歳の頃に父がノッティンガムで勤めることになりイギリスへ引っ越しました。香港にいるときはいつも母に欠点を指摘されていて、数学音痴だとかそういうことばかり言われていました。なのでアートの成績のことなんてちっとも気にしていなかったのに、数年後部屋を整理しているときに成績表を見てアートでは良い成績を収めていたことに気がつきました。「アートは得意なんだ!」と思ってAレベル2でアートを選択し、ノッティンガムのアート・ファンデーションへ進みました。

アートの道へ進むことを、お母さんは許してくれたのですか。

アート・ファンデーションに1年通ったのにノッティンガムで大学に行かなかったので、母は激怒していました。それにキャンバーウェル3でイラストレーションを学び始める前にLCF4でファッション・イラストレーションのコースを1年取り、£3000を「無駄使い」してしまったんです。母には、私は才能が無いし別の進路を歩むべきだと何度も説教を受けました。保守的な家庭でもないのに、「正当な」科目を学んで教育を受けて欲しいと望まれていました。

一家で一番若いからこそ周りを気にせずに好きなことが出来るけど、家族への尊敬を忘れたことはありません。大学卒業後、2年間は香港でフルタイムの仕事とフリーの活動を両立しようとしましたが、イラストの仕事にも他の仕事と同じくらい時間を割かないと中途半端に終わると分かり、完全な独立を決めました。

以前受けたインタビューで自分は反逆的か、という質問をされたことがあります。両親に反対されるような行動を繰り返してきたし、そうなのかもしれません。両親が必ずしも正しいわけではないと証明したい気持ちが背中を押してくれます。家族に対する自分の振る舞いがわがままで無責任に思えることもありますが、自己中心に生きているおかげで本当に楽しいと思えることが出来るのです。5

両親が必ずしも正しいわけではないと証明したい気持ちが背中を押してくれます。

イラストレーションとその他の活動について

アーティストして安定した生活を送ってきましたが、最近になって以前よりもパーソナルな作品を制作するようになりましたね。どのような機転があったのでしょうか。

卒業後はCOSでアルバイトをしながら、Day Job(デイ・ジョブ)6とスタジオをシェアしていました。大学の最終学年でKatie Johnston(ケイティー・ジョンストン)7とはじめた「Play-o-logy(プレイオロジー)」8というプロジェクトでは子供向けのワークショップや催し物を企画して順調に活動していたのですが、9Katieも私もこの活動と自分の作品作りとの両立に苦しんでいたため、2014年にKatieはRCA 10の修士課程に進み、私は香港に拠点を移しました。

香港では、家族に対する罪の意識から真っ先に壁紙会社へ就職しました。3ヶ月後には子供服11の会社に転職し、イラストレーションとグラフィックデザインを担当しました。学ぶことも多ければ毎日絵を描くことが出来てとても楽しい仕事でしたが、それでも時間が出来ればフリーの仕事も受けて色々なイラストを描くことで気持ちを落ち着かせるようにしていました。私が最初に結果を残した個人プロジェクトを選ぶなら、『Villain Hitting(ヴィラン・ヒッティング/広東語:打小人)』12というZINEになると思います。予想以上に反響があり、そのおかげでフルタイムの仕事を辞めて個人プロジェクトに専念しようと決断出来ました。

ここ最近は日本と香港での巡回個展で目まぐるしい毎日を送られていたかと思いますが、初の個展『DOWN TIME』を開催した感想はいかかでしょうか。

2015年後半にはじめてイギリスへ戻ったときは周囲がヨガと瞑想の話題で持ちきりで、なぜそんなブームが突然起きたのか不思議でたまりませんでした。ヨガは前から流行っていたけど、私はヨガをするときちんとポーズが取れているか不安になるし、他の人の方が上手いような気がして見よう見まねで真似してみたり、ポーズの名前を覚えきれなかったり、なによりもレッスン後は身体中が痛むし、とにかくストレスに感じることが多くて。 13 私にとっての瞑想は、どこか家の外へ旅してひたすら何もせずにいることに思えます。リラックスというよりもアクティビティーのように感じるんです。

私だったら、自分らしく何もせずにだらだらしていたい。ただ椅子に座って考えを巡らせたり、ベッドで思いにふけっているとおもしろくなってやめられないことがあって、すごくリラックスできるし仕事のアイデアも浮かんできます。『DOWN TIME』では、こういう経験を表現したいと考えていました。

Charleneのパーソナリティーについて

『DOWN TIME』を経て、特に人々へ伝えたいと思うメッセージはありますか?

そうですね。もっと素直になって欲しい。私は自分に正直で嘘が嫌いな人間です。周囲の反感を買うことを知りながら、自分が信じていることを表現することがあります。嘘をつくのは嫌いだし、自分の思想に隠りたく無いし、こういう心情があってこそ生じる感情や、生きていく上で下せる判断があるからです。誰もがもう少し素直になれれば、今よりも幸せになれると信じています。

ネガティブな出来事も楽観的に捉えるようにしています。『DOWN TIME』では「怠惰」とか「退屈」という言葉をもっとポジティブな言葉に置き換えました。誰もが感じるような気分を表しているだけなのに、こういう言葉がなぜそれほどネガティブな意味を持たなければならないのかは分かりません。もっと受け入れられる感情であるべきなのに。

例えば、『塊魂』14で何もかも破壊して人間や動物を転がし回していると、明らかに冷酷なのに幸せになる、奇妙な満足感を感じることがあります。ラストステージで太陽系を取り込んだときは、少なくとも高橋慶太15のなかではまだ物語が完結しているようには感じませんでした。マイケル・ジャクソンは生きていてマイアミのビーチで日光浴していると信じているし、新たな可能性について考えたり、社会で信じられていることが本当に正しいのか疑問を投げかけることが好きなんです。なぜ特定の状況や行為が「怠惰」とか「退屈」でならなくてはならないのか。誰が決めたことなのか。関連性は薄いかもしれないけど、こういう考えを仕事を通して表現したいと思いました。

もっと素直になって欲しい。私は自分に正直で嘘が嫌いな人間です。(中略)誰もがもう少し素直になれれば、今よりも幸せになれると信じています。

そのような価値観が作品や人生そのもに影響していると思いますか。

昔はかなり凝って洗練されて完璧なイラストレーションを描こうとしていました。ラフな絵のほうが好きだけど、それだと完成されてないような気がしてクライアントに受けいられるか不安だったので、デジタルで描くようにしていました。

ロンドンに住んでいるときははクリエーションに携わっている友人が周囲にたくさんいて他の人と比べると自分が劣っているように思えて、ストレスばかり感じて気を起こすことができませんでした。一時的な流行に流されているような気がして、2014年に香港への帰国を決意しました。するとしばらく経たないうちに自分の姿が見えてきて、自分に正直にイラストを描くことが出来るようになり、周囲の評価が気にならなくなりました。そのときにはじめて自分がしていることが好きになり、素直になることが鍵だと学びました。

以前のスタイルが自分に合ってないと気づいたきっかけは?

子供服メーカーで働いていたとき、マネージャーには「絵が複雑すぎて分かりづらい!もっとシンプルにして!」とよく言われました。それで、自分が空白を埋めるためだけに必要以上の色やパターンやテクスチャーを使っているのではないかと感じたのです。メーカーのメインはニットウェアだったので、私が使えるのは4色程度でした。最初は難しかったけど、制限があることでインパクトのある絵ができることが徐々に分かってきました。それから絵に使う色の数を抑えて、なるべくシンプルなアプローチを取るようになりました。

なかでもパステルカラーは大好き!香港の不動産ビル16にアニメの食べ物や漫画とか、子供の頃に見たものの思い出が影響しているのかもしれません。本はあまり読まないけど、漫画なら千話以上は読んできました。17その影響は大きくて、漫画から影響を受けて今の作品のスタイルに辿り着いただけでなく、根本的にアートを始めるきっかけを作ってくれのが漫画でした。

フルタイムという仕事の仕方はどうしても好きになれません。就職していた時も心からは楽しめませんでした。だけど、限られた時間でプロらしく仕事をこなす方法とか、短期間にたくさんのことを学べるのはフルタイムの利点だと思います。大学では教えてくれませんからね。

遊びを通した学習

遊びを通した学習に関する博士論文を書いたり、キャンバーウェルでレクチャーを行うなど、教育に関心があるようですね。なぜ教えることに興味を持ち始めたのでしょうか?

性格上、世話をしたり知識を共有することが好きなんだと思います。大学時代、「Play-o-logy」18という活動を通してKatie19と一緒に小学校でワークショップを行ったり、教育や遊びに関するプロジェクトを企画していました。それでチューターも、私が教育に関心があると踏んだのかもしれません。

自ら教える立場に立つことで、自分が子供のときに得られなかった知識や経験を子供に伝えたいと思っています。私が香港で通っていた学校では書き取り試験やテストが毎月あり、臨月で学期試験も行われました。書き取り試験に落ちて両親に叱られるのではないかと心配になり先生の前で泣いたこともあります。落第してもそれで終わらず、間違えた答えを20回書いて暗記しなければなりませんでした。とても退屈な学習方法に思たし、こういう経験から当時の自分も喜んで取り組めたであろう遊びを通した教育方法を広めたいと感じるようになりました。20

先ほども述べましたが、高橋慶太21による遊びを通した教育のアイデアには大きな感銘を受けました。ノッティンガムのプレイグラウンドのデザインも提案しているんですよ。22 実現はしませんでしたが、彼のアイデアには驚かされました。子供たちがふわふわのコスチュームに着替えることで遊びながら掃除もできる滑り台などがありました。こうした遊びの意図を子供たちが理解することよりも、遊びを通して彼らの想像力やアイデアを駆り立てられることが重要で、楽しくて自然だと思うのです。23

今後の活動について

最後になりましたが、今後の予定について聞かせていただけませんか。

先のことを考えすぎると、計画を実現するのが難しくなります。断言したことは全て残らず達成しないと悲しくなりますし。今目標としているのは、5月に予定されている台北での展覧会です。かなり大きな会場で行われるので、今までで最大規模の個展になる予定です。はじめはここでも『DOWN TIME』を展示しようと提案しましたが、今回のテーマは頭に浮かんだけど重要性は低い「ささいな考え」にすることにしました。プロジェクトを支えるリサーチやイデオロギーに共通事項があることから、『DOWN TIME』の系譜として捉えています。もしかしたらささいな考えを意味のある作品に変えられるかもしれません。

  1. Charleneの個展『DOWN TOWN』は、大阪の印刷屋兼ギャラリースペース「レトロ印刷JAM」、佐賀の「PERHAPS GALLERY(パハプスギャラリー)」、香港の「Odd One Out(オッド・ワン・アウト)で開催された。
  2. GCSEおよびAレベルとは、イギリスの中等教育において学生の過半数が受験する資格試験。GCSEは就学10年目と11年目(14〜16歳)の生徒を対象に実施されており、それに続くかたちでAレベルが卒業前の生徒(16〜18歳)に対して行なわれている。
  3. キャンバーウェルとは、ロンドン芸術大学の6つあるカレッジのひとつで南ロンドンに校舎を持つキャンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツのこと。以前Us Blah + Me Blahの応じてくれたCharlotte Mei(シャーロット・メイ)とFelix Treadwell(フェリックス・トレッドウェル)もキャンバーウェルの卒業生である。
  4. ロンドン芸術大学を構成する6つのカレッジのひとつ。Jimmy Choo(ジミー・チュウー)やIoana Ciolacu(イオアナ・チョラク)など、著名なファッションデザイナーを輩出してきた。LCFとは、London College of Fashion(ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション)の略称。
  5. 祖母の石造家屋に集合したCharlene(中央)と彼女の家族。
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  6. Day Job Studioとは、2012年にキャンバーウェルの卒業生10名によって設立されたコレクティブ。Joshua Checkley(ジョシュア・チェックリー)、Daniel Clarke,(ダニエル・クラーク)、Grace Helmer(グレース・ヘルマー)、Katie Johnston(ケイティー・ジョンストン)、Charlene Man(シャリーン・マン)、Charlotte Mei(シャーロット・メイ)、Ella McLean(エラ・マグリーン)、Peter Rhodes(ピーター・ローズ)、Victoria Willmott(ヴィクトリア・ウィルモット)、Aaron Ziggy(アーロン・ジギー)をメンバーとする。
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  7. Katie Johnstonは、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート大学院を卒業したばかりのイラストレーター。キャンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツで学士課程を卒業している。
  8. 「Play-o-logy」とは、Charleneとキャンバーウェルのイラストレーションコース卒業Katie Johnstonによるデュオ。
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    遊びを通じた学習やクリエイティビティの形成を目的に、児童向けの参加型ワークショップを開催している。活動の詳細が気になる型には、Katieが「It’s Nice That(イッツ・ナイス・ザット)」主催の月次イベント「Nicer Tuesdays(ナイサー・チューズデイズ)」で行ったプレゼンテーション(英語のみ)をご覧いただきたい。
  9. CharleneとKatieの過去の活動は、ふたりのブログに記録されている(更新終了、英語のみ)。
  10. RCAとは、Royal College of Art(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)の略。セントラル・ロンドンのSouth Kensington(サウス・ケンジントン)とBattersea(バタシー)に校舎を持ち、アートとデザインの修士課程プログラムを提供している。2015年と2016年のQS ワールド・ユニバーシティ・ランキング調べでは、アートとデザインで世界最高峰の施設に選出されている。
  11. 噂ではCharleneが近い将来に子供服を手がけるという話も!
  12. CharleneによるZINEのタイトル『Villain Hitting(ヴィラン・ヒッティング/広東語:打小人)』は中国南部と香港で親しまれる厄払いの一種で、敵に呪いをかける儀式に由来している。
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    儀式に登場する「敵討屋(打小人)」は、路上にてスリッパや靴などで紙を叩きつけながら客引きをする年配の女性であることが多い。下記のページでは、なんとも稀な打小人のビデオインタビュー(英語のみ)が公開されている。CharleneのZINEを購入希望の方はこちらへ。
  13. Charleneはこの気持ちを『Lazy Yoga Guide(レイジー・ヨガ・ガイド)』というZINEに込め、正しいポーズをとるよりもリラックスしてくつろぎたいという人に向けて発信している。購入はこちらから。
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  14. 「塊魂」とは強力な粘着力を持つ玉を転がすことでサイズの大きなアイテムを巻き込んでいき、最終的には星を作り出すことを目的とするビデオゲームシリーズの第一弾。シンプルなルールとは裏腹にこのゲームがカルト的な人気を誇っていた事実は、以下のビデオにも記録されている。クリエイティブで型破りな方法で平凡なアイテムを集め環境を作る、年齢に関係なく全てのプレイヤー楽しめるコンセプトが讃えられて、2012年にはなんとMoMA(ニューヨーク近代美術館)で開催された展覧会『Century of the Child: Growing by Design(直訳:デザインが育てた現代の子供たち)』にも出品された。「塊魂」については、以前Us Blah + Me Blahが行ったCalum Bowen(カルム・ボーエン)のインタビューでも触れられている。
  15. 高橋慶太は、「塊魂」を代表作とする1975年生まれのゲームデザイナー。
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    現在はフリーランスで活動しており、2017年にはプレイステーション4のゲーム「Wattam」を発表する予定。最新作の予告ビデオはすでにこちらで公開されている。他にも高橋は、「塊魂」のトラックを作曲した境亜寿香と共に「uvula(ウヴラ)」というデュオでも活動している。
  16. 重慶大厦とは、Wong Kar-wai(ウォン・カーウァイ)の1994年製作映画『恋する惑星(原題:Chungking Express)』にインスピレーション香港に建てられた5棟の複合施設の総称。建物に暮らす大半の住居人は外国籍であり、ショップで取り扱われている商品のほとんどが主にアフリカやアジア諸国など国外からの輸入品であることから、グローバリゼーションの潮流を象徴的に表す存在として知られている。70年代には香港の格安賃貸物件として名を広めた重慶大厦だが、90年からは卸売商の根幹を担う存在となった。以下のビデオには、重慶大厦の女社長の答えた数少ないインタビューのひとつが収録されている。インディペンデントマガジン『Works That Works(ワークス・ザット・ワークス)』第二号の記事に書かれた「香港には、オーストラリアからオパールを輸入して中国の深セン市で加工し、重慶大厦経由でオーストラリアへ送り返し、現地を訪れる旅行客への土産品として売るオパール販売業者がいる」という一行には、重慶大厦で行われている特異なビジネスの姿を集約されているだろう。さらに同記事では、2007年から2008年にかけてサハラ砂漠以南のアフリカの地域で利用された携帯電話の通信サービスのうち約20%が重慶大厦を経由してつなげられたという話など、興味深いエピソードが他にもいくつか紹介されている。『Works That Works』自体も素晴らしい雑誌なので、ぜひお読みいただきたい。
  17. インタビュー収録後にCharleneは「幼い頃には『クレヨンしんちゃん』を読んでました。少女漫画も昔から好きで、今でもよく読んでいます。とにかくコテコテで最高だし、何も考えたくない時に読みますね。どの漫画も結末は一緒だけど、どれも感情表現は違っているところがおもしろいと思います」と付け加えてくれた。
  18. 「Play-o-logy」に関しては、脚注8を参照。
  19. Katie Johnstonに関しては、脚注7を参照。
  20. Charleneの教育に関する考えは、一本化されたテストが無く成績評価もほとんど行われないフィンランドの教育制度に類似する部分があるかもしれない。他国に比べて制度がゆるやかなフィンランドだが教育の質は高く、国際的な学習到達度を示すPISAテストでも数学、科学、読解力において素晴らしい結果を残している。以下の動画で紹介されている映画『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』のワンシーンでは、フィンランドの教育大臣が生徒は宿題をする代わりに「子供でいられる時間、若者でいられる時間を持って、人生を楽しむべき」と、Charleneが「Play-o-logy」に込める願いを彷彿とさせる考えを述べている。
  21. 高橋慶太に関しては、脚注15を参照。
  22. 2009年には高橋慶太によるノッティンガムのプレイグラウンドのデザイン計画が発表されたが、この計画は予算面の問題から中止となった。ここで公開されている高橋の初期デザインを見ると、なんとも惜しい気持ちになる。しかし高橋が最近投稿したツイートによると、彼はまだプレイグラウンドプロジェクトを諦めてはいないようだ。他にも高橋はトランプ米大統領によるメキシコ国境沿いへの壁の建設プロジェクトに関するアイデアを公開している。
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  23. 収録後、Charleneは彼女が高く評価する「レッジョ・エミリア・アプローチ」という教育実践法について話してくれた。第二次世界大戦後からイタリア北部に位置するレッジョ・エミリアという地域の村々から広まった考え方は、人の人格は生後数年間のうちに形成されるもので、子供達はペインティング、彫刻、芝居といった数種類の「言語」で自分のアイデアを表現することによって学んでいく、というものだ。子供は学習方法を自ら決めるべきであり、自分の意見を述べることで成長していく、というCharleneの考え方には通ずるところがいくつもある。CNNは何年も前にレッジョ・エミリア・アプローチに関する特集を製作したており、その映像が以下の動画に公開されている(英語のみ)。映像内では、レッジョ・エミリア・アプローチの哲学だけでなく米国の学校で実際に行われた実例が紹介されている。(参考:ウィキペディア)

This interview was posted on 13 March 2017 and was originally conducted in English.

Interview (Us Blah) & Footnotes (Me Blah):
Tsukasa Tanimoto

Copy-editing (English):
Kate Reiners

Translation (English to Japanese):
Marie Sasago