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Sarah Midori Perry

Sarah Bonito
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Sarah Midori Perry(セーラ・ミドリ・ペリー)は、ファンから「KKB」の名で親しまれるロンドンベースのスリーピースバンド、「Kero Kero Benito(ケロ・ケロ・ボニート)」のメンバー。2013年、当時バンドメイトを探していたGus Lobban(ガス・ロバン) 1 とJamie Bulled(ジェイミー・ブレッド) 2にSarahが出会ったことから現在のKKBを結成。以来、3人のメンバーで音楽作りを続けてきた。日本人とイギリス人の両親を持つSarahがバイリンガルで紡ぐ、お茶目な歌詞と弾けんばかりに陽気なステージパフォーマンス。そして、ゲーム音楽と日本文化にルーツを持つKKBの音楽3。その絶妙な掛け合わせが放つ魅力からも分かるように、Sarahの存在なしに今のKKBは語れない。他にも、「Sarah Bonito(セーラ・ボニート)」名義でソロ活動を行い、Mark Redito(マーク・レディート)4や©OOL JAPAN 5 がプロデューサーを努める作品にもラッパーとして参加。さらには、ビジュアルアーティストとしての一面も持ち、本格的な制作活動に取り組んでいる。

今回のインタビューでは、Kero Kero Bonitoの結成ストーリーから、Sarahが文学・執筆に向ける情熱とラップとのつながり、アーティストとボーカリストという似て非なる活動が相互に及ぼす影響に関して語っていただきました。

Sarah Bonito: Twitter - Instagram
Sarah Midori Perry: Facebook - Instagram

Kero Kero Bonitoの結成に至るまで

どのような経緯から、KKBの活動に関わりはじめたのでしょうか。

バイリンガルで歌えるラッパー/シンガーの募集をネットで見て 6、即座に応募を決めました。音楽経験と呼べるものなんて、ブラスバンドでのアルト・サクソフォン演奏くらいしかなかったのに。だけど、他のメンバーと3人ではじめてリハーサルをした日から波長が合って、すっかりと意気投合してしまったんです。7 いずれかは出会う運命だったんでしょうね!

グループ結成当初、ひとつの曲のためにラップを書き終えたときは、生まれてはじめて音楽表現という世界を発見したような感覚になりました。グループに入る前は、ビジュアル表現に集中していたので。まるで別次元の、輝かしい世界に遭遇したような気分でした。

影響を受けてきたミュージシャン

プライベートではどのような音楽を聴きますか。

日本で家族と暮らしていたときは、毎日のように父がRed Zeppelin(レッド・ツェッペリン)、Deep Purple(ディープ・パープル)、T. Rex(T・レックス)、Sex Pistols(セックス・ピストルズ)、The Clash(ザ・クラッシュ)といったパンクロックバンドを聴かせてくれました。最高にカッコイイと思いながら、聴いていましたね。

日本では外国の血を引いているというだけで周囲の注目を浴びるのですが、私はこうした環境に馴染めず、極度に非社交的で内向的な子供として育ちました。8 そんな境遇もあって、周囲に惑わされず、少し反抗的な雰囲気をか醸し出している人には、大きな魅力を感じましたね。私のステージパフォーマンスは、パンクミュージックからインスパイアされている部分も結構あるんですよ。

最近は、Young M.A(ヤング M.A)9という女性ラッパーにかなりハマってます。Die Antwrood(ダイ・アントワード)10もとても大好き。超カッコイイ!自分たちの世界観を確立させていて、彼らにとって音楽はその世界を構成するひとつの要素に過ぎない。パフォーマンスにパワーがみなぎっているの。他にも、最近はGFOTY 11をよく聴きます。それから、Reykjavíkurdætur(レイキャヴィークダイトル)12という女性ラップグループも。

歌に興味を持ちはじめたきっかけは?はじめから音楽制作の道に進むつもりだったのでしょうか。

いいえ、全く!まさか音楽を仕事にするなんて、思いもしませんでした。十代のときにLindsay Lohan(リンゼイ・ローハン)が『フォーチュン・クッキー(2003)』でギターを弾くのを観て、バンドに入りたいと思ったことはありましたが。それを除けば、考えたこともありませんでした。

作詞プロセス

Kero Kero Bonitoでは大半の作詞を担当されていますが、歌詞のアイデアはどのようなところから得ているのでしょうか。

私、ものすごくロマンチストなんです。世の中の不思議な一面を知るとワクワクする。そういうときに、アイデアが浮かびます。自分のなかでは英語と日本語をひとつの言語としてとらえているから、両方の言語で韻をふむときが一番しっくりときます。まるで2つの異なる世界をつなぎ合わせているような感覚ですね。

作詞のプロセスは、曲によって変化するのでしょうか。

曲によって全く違うの!Sarah Bonitoとしての曲はオンライン・コラボレーションがメインだし、他にもその時々に考えていることによって曲のテーマが変わってきます。たとえばマクロスMACROSS 82-99 13 と制作した「Horsey」は、私が馬に執着するばかりに未年ではなく午年に生まれたかったと願う気持ちがベースになっています。

作詞の多いなインスピレーションとなるものについて教えてください。

アート作品の制作が、音楽のみならず、生活のあらゆる部分に影響を及ぼしているように感じます。アートと音楽は、どちらも自分のなかにあるものを外に引き出してくれる言語みたいなものです。基本のアイデアは一緒で、ただツールが違うだけ。音楽に関していえば、音楽とビジュアルアートが融合するパートなので、演奏しているときが一番ワクワクしますね。演奏は「体験」の一種としてとらえているので、自分のオーディエンスが、目の前で繰り広げられていることや耳に入り込んでくる音に対してどのような反応を見せるか、きちんと配慮しなくてはならない。まるで3Dアート14 のように、人を招待できる世界を作り出している感覚で取り組んでいます。

十代のころ、放課後になると物語作りや読書に没頭しました。小説は日本語で書いて、ありとあらゆる文芸賞に応募していたんです。それぞれ200〜300ページにも及ぶ長さでした。私が好きな作家が17歳で処女作を出版したことを知って、自分もそれまでに本を出すと決めていました。結局夢は叶わず、小説作りも辞めてしまいましたが。それでも、終始筆を握っていたこの時期が、現在の作詞活動につながっているはずです。

ライターとしての自分は、どのようなタイプに当てはまると思いますか。

私が書いていた小説って、ヘンテコなものばかり!たとえば、地球からの死者が多すぎて天国が人口過剰になる話とか。解決策として、天国の統治者が天国に入りきらなかった人たちの魂を地球に送り返してしまうんです。それで、「昨日死んだおばあちゃんが、生き返った!」なんて地球の人が騒ぎ始めて、大混乱が起きてしまう。

アート制作

アート作品のなかでひとつのパターンを繰り返し使うことがありますが、なにか意味合いがあるのでしょうか。

特定のキャラクターやパターンを複数の作品に登場させることがあります。私のキャラクターはみんな一つの世界に属していて、描けば描くほど正体を露わにしてくれる。近ごろは円を描くことに凝っています。私の知る限りでは永遠に続くものなど存在せず、すべてが始まりと終わりを持っています。だけど、円は例外的に永続的で欠けた部分を持たない。永久性を持ち合わせていて、とても不思議な存在です。

作中で使うのは、派手な色が多いですね。何か特別な理由があるのですか。

光と闇について考えを巡らせることがあります。闇があって初めて光が成立するという概念が非常に面白い。カラフルなものを見ると、白黒を見るときよりもポジティブな印象を受けます。私が作品で使うカラフルな色は、「光」を表現しています。

今後の活動

ケロ・ケロ・ボニートの話に戻りますが、現在はどのような活動をされているのですか近ごろの成功で、仕事に対する姿勢は変化しましたか。

それはトップシークレット (ニコリ) 。だけど、近いうちに必ず発表します!

  1. Gus Lobbanは、Kero Kero Bonitoのメンバー。ソロでも活動を行っており、Kane West(ケーヌ・ウエスト)名義で「PC Music(PCミュージック)」と「Turbo Recordings(ターボ・レコーディングス)」からレコードをリリースしている他、Augustus(アウグストゥス)の名でプロデューサー活動を行っている。
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  2. Jamie Bulledは、Kero Kero Bonitoのメンバーでありながら、ガスと同様にソロ活動としても活動中。最近では、WHARFWHIT(ウォーフウィット)名義でDouble Denim Records(ダブル・デニム・レコーズ)より、「ELBOWS」をリリースしている。
  3. なかでもGusは、00年代初期に絶大な人気を誇ったJ-POPラップユニット「HALCALI」からの影響を受けている。
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    Kero Kero Bonitoの1stアルバム『Intro Bonito』とHALCALIのデビュー作品『ハルカリベーコン』には共通点が多い。
  4. Mark Reditoは、ロサンゼルスを拠点とするフィリピン出身のミュージシャン。旧名「SPAZZKID」。
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    J-POP に魅了されるアーティストのひとりであるマークは、「Truly」という曲でSarahとのコラボレーションを果たしている。 https://soundcloud.com/markredito/truly-feat-sarah-bonito
  5. ©OOL JAPANは、インターネットを中心に活動を行うプロデューサー。その素性はあまり知られていない。Sarahは過去に、©OOL JAPANプロデュース作品、「TOKYO」と「Rush Hour」の2曲にラッパーとして参加している。
  6. GusとJamieが「MixB」というウェブサイトに投稿した日本人メンバーの募集にSarahが応募している。MixBは海外在住の日本人に使用されることが多いが、機能としてはイギリスの「Gumtree」やアメリカの「Craigslist」に近いといえる。
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  7. Sarahが参加する以前、KKBは、Gus、Jamie、Ken Kobayashi(ケン・コバヤシ)の3名で活動を行っていた。
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    しかし、就職の都合からケンが止むを得ず脱退。しかし、日本人とドイツ人の両親を持つケンは、現在も作曲活動を続けている。最近では、新曲「Like the Stars」をリリースしている。
  8. 近年では「ハーフ」という表現が差別的であると疑問視する声も増えている。2013年制作のドキュメンタリー映画『ハーフ』では、日本に暮らすミックスの人々を被写体にしながら、こうした問題が指摘されている。
  9. Young M.Aはニューヨーク・ブルックリン出身の女性ラッパー。
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    Sarahのお気に入りは、「Brooklyn (Chiraq Freestyle)」という曲。
  10. 2008年にケープ・タウンで結成されて以来、南アフリカのカウンターカルチャー運動「zef」に影響された独自のスタイルで注目を集めてきたラップ・レイヴ。
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     Sarahのお気に入りは、「Baby’s On Fire」という曲。

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  11. GFOTYはイギリス出身のシンガー。「GFOTY」というアーティストネームは、「Girlfriend of the Year(ガールフレンド・オブ・ザ・イヤー)」というフレーズの頭文字を取ったもの。印象的な歌詞と作中で見せる魅力的な語りが人気が中毒的な音楽性を生み出している。作品は、PC Musicのプロデューサー、A.G. Cook(A. G. クック)とタッグを組むことが多い。なかでも「Secret Mix」は必聴のミックス。
  12. Reykjavíkurdæturは「レイキャヴィークの娘たち」という意味の名で活動するアイスランドのガールズラッパーグループ。
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     音楽を通して、社会的平等やLGBTQを奨励する他、アイスランドにおける政治問題に対する講義活動を行っている。クラウドファンディングにより見事にプロダクションが実現されることとなった1stアルバムは、近日中にリリース予定。シングルとして発表されている「Fiesta」という曲も要チェック作品だ。
  13. MACROSS 82-99はメキシコ出身のプロデューサー。Sarahとは2014年に「Horsey」という曲でコラボレーションを行っている。
  14. 3Dアートに関して追記すると、SarahはTerrell Davis(テレル・ディヴィス)のアートワークに猫のイラストレーションを提供しており、彼らが制作したアートワークはYoshi & Komonoの「Cat Cafe」というアルバムのジェケットに使用されている。
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This interview was posted on 31 July 2016.

Interview (Us Blah) & Footnotes (Me Blah):
Tsukasa Tanimoto

Copy-editing (English):
Kate Reiners

Translation (English to Japanese):
Marie Sasago

Special Thanks to Ririko Sano.